ジュワッ…口の中に広がる秋の香り。
9月の味覚と言えば、日本人なら何をおいても秋刀魚を思い出すのではないでしょうか。
日本人の誇りとも言える「刀」の字をあてられたこの魚は、その字とは裏腹に、
昔から決して高級魚ではなく、庶民に愛され親しまれてきた魚でした。
落語「目黒の秋刀魚」は、そのことを面白おかしく語っています。
鷹狩でお腹を空かせたお殿様。
その時、庶民から貰った下賤な魚、秋刀魚の味が忘れられません。
親族の集まりの際、無理を言って秋刀魚をメニューに加えさせますが、一向に美味しくありません。
「どこの秋刀魚だ?」と聞くお殿様に、家来たちは「日本橋魚河岸」のものだと答えます。
それを聞いたお殿様、得意げに「秋刀魚は目黒に限る!」。
普通に考えれば、海から離れた目黒の秋刀魚が、新鮮な日本橋魚河岸のものに敵う訳がありません。
それでも、目黒の秋刀魚の方が美味しかったのは、「ただ焼いただけ」という素朴な調理方法にありました。
お殿様の身体を気遣って、脂を落とし小骨まで落とした秋刀魚。
ちょっと想像してみても、美味しいはずがありませんよね。
この落語にちなみ、今でも目黒駅周辺では、品川区側と目黒区側で秋刀魚のお祭りがとりおこなわれています。
(今年は9月6日に開催されました)
どちらも、秋刀魚が無料配布されるということで、長い行列ができることでも有名ですね。
たとえ手を掛けなくても旨いものは旨い。
それは、不器用でも自分らしく生きようとする私たちへの力強いエールのようにも聞こえます。
「ただ焼いただけ」で旨い秋刀魚を堂々と迎えうつお酒は、
『黒松白鹿 一火生詰 特別純米酒』。
(飲み比べするにはこちらもオススメ!『”一火生詰”と”生囲い” 限定酒 飲み比べセット』)
※販売終了いたしました。
春にしぼったお酒に火入れをし、約130日間も貯蔵した上で生詰された、まさに「手を掛けた」秋のお酒です。
新鮮な秋刀魚の旨味に熟成された秋酒の旨味。
「手を掛けない旨さ」と「手を掛けた旨さ」が舌の上で刃を交わらせるなんて…。
想像しただけで垂涎ものですね。
お殿様にも庶民にも、等しく、旨い旨い日本の秋がやってきました!