チリリン…チリリン…。
風鈴の涼やかな音に一時夏の暑さを忘れる。
今年もそんな季節がやってきました。
軒先に吊り下げられた風鈴の音にホッと心を癒されるという経験ありますよね。
私たち日本人にとって、夏の風鈴はまさに原風景です。
その音色は、鈴虫の鳴き声に似ているとも言われるほど可愛く儚げなのに、
どんな音楽にも負けない存在感で私たちの耳にこだまします。
風鈴の起源は、「風鐸(ふうたく)」。
お寺のお堂の四隅に吊られた鐘のことです。
仏教の伝来とともに日本にもたらされて以来、魔除けの道具として、貴族の間で愛用されてきました。
「風鈴」という呼び名は、浄土宗の祖 法然の頃からとも言われています。
日本の夏は、湿気も多く、元々疫病の流行りやすい季節です。
風と共に流れ込んでくると考えられていた病気などの厄災から身を守るために、
古来日本人にとって風鈴はなくてはならないものだったのです。
また、風鈴の音は、夏に活動的になる野生の動物たちからも、当時の人々の暮らしを守ってくれていたのかもしれませんね。
風鈴の音色は、まさに自然まかせ、風まかせ。
それでも、ただ流されるのではなく、自分の役割をきちんと果たす風鈴の姿は、
凛とした日本人の心意気そのものです。
そして、それは、日本酒を造る心にも繋がります。
その年の気象条件など人智の及ばない数々の困難も、すべて「自然の恵み」に変える。
毎回変わる一期一会の自然との対話の中で出来上がった、白鹿の銘酒たち。
誇り高きこの味は、風鈴の音のように、私たちの心を癒します。
この夏は、自然と、風鈴と、そして日本酒。
自然の中で聴く涼やかな風鈴の音に、旨いお酒で舌鼓。
それは、最上級のハーモニーとなって夏の夜空にこだまします。
今宵飲む酒、嗚呼、粋な酒…。