楽しいお正月休みも終わり、いよいよ2016年が本格的に始動します。
仕事始めは、挨拶回りや新年会と気を遣う場面も多いもの。
最近は、「五月病」ならぬ「正月病」という人も増えてきました。
その上、空気も乾燥するこの季節。
お正月気分も冷めやらぬうちに、風邪で体調を崩してしまっては大変です。
昔から、この時期、お正月疲れや風邪の引き始めには、「たまご酒」が愛飲されてきました。
元々、卵は、2000年以上前から、日本でも薬として利用されていたと考えられています。
ところが、730年、聖武天皇の「殺生禁断の令」により、
畜肉や卵を大っぴらに食べることは出来なくなってしまいました。
そのためか、「たまご酒」が書物で確かめられるのは、江戸時代初期のこと。
寛永年間に成立したとされる『料理物語』の「料理酒之部」の筆頭に、
「たまご酒」に関する記載が残されています。
「たまごをあけ 冷酒をすこしずつ入れ よくときて 塩をすこし入れ 燗をして出候也 たまご一つに酒織部に三盃入るよし」
(卵を割り、冷やのお酒を少しずつ入れてよく溶いて、塩を少し入れ、燗をして出す。卵一つに、酒を織部に三杯入れるとよい。)
また、「練酒」という項目には、
「たまごに白ざたうを入れ 冷酒にてよくよく練りあはせ 燗をいたし出し候也」
(卵に白砂糖を加え、冷やのお酒でよく練り合わせ、燗をつけて出す。)
と書かれています。
このように、代々伝えられてきた、たまご酒。
ただの民間療法と侮ることはできません。
卵は、現代でこそ安価なものですが、戦後しばらくの頃までは非常に貴重な食べ物でした。
それでも、病人のため、なかなか手に入らない卵を使って作るたまご酒には、
やはりそれ相当の効果があったということが科学的に証明されています。
卵には、良質のたんぱく質が多く含まれています。
さらに、活性酸素の発生を抑制すると言われるビタミン類も豊富に含有しています。
そして、何より驚くべきことに、現代の風邪薬に配合されている、塩化リゾチームは、
卵白に存在するリゾチームという酵素から作り出されているのです。
そんな現代医学でも活躍する卵に、こちらもまた「百薬の長」と呼ばれる日本酒を加えるのですから、
なるほど、何とも頼もしい「栄養ドリンク」が出来上がる訳ですね!
おづおすすめは「カプチーノたまご酒」です。
卵、日本酒、砂糖で作ったたまご酒に、さらに生クリームを加え、まろやかで喉ごしがよく、
例えば寒い夜道を歩いた帰り、ホッと一息、「カプチーノたまご酒」で温まれば、心も身体も芯からポカポカ。
風邪もストレスももう怖くありません。
昨年を表す漢字に選ばれたのは「安」。
おばあちゃんやお母さんが、心を込めて作ってくれるたまご酒が効く理由は、卵の成分はもちろんのこと、
私たちが今、最も欲している「安心」「安らぎ」がたっぷり含まれているから。
命の源、卵を使って作るたまご酒は、今も昔も変わらず、
辛い季節を乗り越える「心と身体の安定薬」なのかも知れませんね。
【カプチーノたまご酒のレシピ】
1人分
■主材料
卵黄L玉・・・・・・・・・・・・・・・・・・1個
砂糖(上白糖)・・・・・・・・・・・・・・・小さじ4~5
特撰 黒松白鹿 黒松 純米 もち四段仕込・・・・・・・100CC
生クリーム(乳脂肪35%)・・・・・・・・・・お好みで大さじ1
■作り方
① きれいなボウルに、卵黄と砂糖を入れ、ホイッパー(電動)でよく混ぜ、白っぽくなるまで泡立てる。
※手でホイップする時は、砂糖を4回くらいにわけて入れる。
② 小鍋に日本酒を入れ、温め、鍋ふちに泡がつき熱くなったら火を消す。
③ ①をホイッパーで泡立てながら、②の日本酒を少しずつ入れてカプチーノのようにして、温めた器に入れていただく。
③にお好みで生クリームを入れ、味の変化を是非お楽しみください。
カステラやマドレーヌや焼きメレンゲやクッキーなどを一緒に、または、浸しながら、、、デザートとしても楽しめますよ。
レシピ監修/食研究家 石井達也・裕加